十湖奇行逸話40 瓶中の白髭
翁が十二年前東京に遊び六十日あまり花笠庵翠葉宗匠の虚に逗留してイザ帰郷といふ時に翁は尺余の白髭を切って私が死んだと云ふ事を聞たら庭内句碑の側に之れを埋めて貰らひたいと翠葉宗匠に頼んだので其の白髭を小瓶に納めて保存してあったが大正十五年七月十日に翁の死んだ事を新聞で見て翠葉宗匠は約の如く直ちに瓶中の白髭をば句碑の側に埋め二十五日の葬式には遥々来て会式し手向の吟と共に「瓶中の白髭」なる一文を浜松新聞に掲げて弔意を表した。
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