高野山紀行(7) 第444回
翌日は案内役一人を連れに加え、関西線に乗り込み紀州和歌山へと向かう。
伊賀の柘植駅付近は旧伊賀街道とその宿場街が残っており、車窓には田園風景が広がっている。
窓を開けると田植えが済んだ田園から颯爽とした初夏の風を運んでくる。
芭蕉が生まれた地でもあり十湖ら一行には感慨深い。
「いい天気になりましたね。これなら秀逸な句が生まれそうな気配ですよ」
口をつぐんだまま外を眺めている卓曙に向かって黄鶴は声をかけた。
「そうだなあ。それより少し腹が減ったぞ」
卓曙は句作りのことより食い気の方が気になっている。
駅で買った柿の葉すしの包みを解き昼食とした。
鯖を柿の葉で包み、押しをかけた鮨で柿の葉を剥がして食べた。
柿の葉は食べないが随分と葉がやわらかい。
産地によっては、塩漬けにするところもあるがここのは違った。
酢の匂いが心地よい。脂ののった鯖のまったりとした旨みがあった。
暫く汽車は駅に留まり、反対車線の汽車が来るのを待つ。
心して聞かうよ伊賀の田植え唄
そのうちに発句も交わらん田植え唄
などと十湖が詠んでいるうちに一行の腹が寿司で満たされたのか、向かい側の座席からいびきが聞こえてくる。
友五人汽車の昼寝もまたおかし
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