真筆・十湖の句と風景 謹賀新年「寒月照梅花」
明治44年正月、十湖宗匠はどのように過ごしていただろうか。
勅題は「寒月照梅花」宗匠はこのとき63歳になろうとしている。
前年は親友である笠井町の画人司馬老泉がこの世を去った。
常に十湖の片腕となり俳画をかいては句会を盛り上げていた立役者でもあった。
その男が76歳で師走に亡くなり十湖にとってはつらいできごとであった。
だが悲しんでばかりはいられない。
一方で十湖のもとに門人鷹野弥三郎がやってきて、結婚したい相手の親がなんとも言うことを聞いてくれないので、何とか手助けしてほしいと頼み込まれ、仕方なく十湖の養女にした。
旧姓岸つぎ当年20歳。年明けて無事結婚、つぎに長男が生まれる。
養女鷹野つぎは後に島崎藤村に師事し、浜松出身の女流文学者になった。
寒月照梅花とは「寒さの中にあって春の兆しを見つけるもの」との意だが十湖にとっては波乱含みの年頭であった。
それでもできあがった句は
月寒う梅白う年明けにけり
十湖の真筆は手元にないので、老泉画伯の俳画を披露した。
(司馬老泉の遺作)
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