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2023年2月26日 (日)

鶴氅(かくしょう)のゆくえー「尊徳の遺品」顛末記(1)

 長かった梅雨が明けて、掛川の空は抜けるような青空である。
 夕暮れまでには、まだ時間があった。
 夕食を済ませたら家族で演劇鑑賞に行くという。
 小学校で薦める演劇教室の一環だ。
「パパ早く行こうよ。タバコなんか吸っていないで」
 山香さつきはレストランの喫煙コーナーで煙草をふかしている父を急かした。
 開場時間が押し迫っているわけではない。
 早く会場を目指したかった。
「はいはい、わかりました」
 父はしぶしぶ立ち上がった。
 母が目でさり気なく父に合図をしたからだ。
 レストランを出た三人はその足で文化会館へ向かった。
 会館は歩いて数分のところにあり、同じ方向を目指す家族が次々と三人を追い抜いて行く。
 今日の演目はオペラ「夕鶴」だ。
 十一才になったばかりのさつきには少し難しいかと心配していた母だが、飽きずに見入っているさつきの様子に心配は無用だった。
 さつきはオペラということばの響きに興味を持ち、舞台に立つ地元出身ソプラノ歌手の歌声に心を動かされたようだった。
 終演後の帰り道はさつきが鼻歌交じりでソプラノ歌手の真似をしている。
 月が煌々と足元を照らし、三人の会話が弾んでいた。

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