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2023年3月17日 (金)

鶴氅のゆくえー「尊徳の遺品」顛末記(7)

 掛川市内にある梅の名所は今が真っ盛りだ。
 龍尾神社は小糠雨でも多くの参拝客で賑わっている。
 まもなく「百花繚乱」という言葉が当てはまる紅白のしだれ梅の光景が広がっていた。
 その中をさつきが青年と連れ立って歩いている。
 さつきはもう二十五歳になった。
 青年は自分の婚約者であり中学校時代の同級生で秋乃翔太という。
 当時は気にする仲ではなかったが、大学卒業を前に教員資格の試験に行った時偶然会場で出会った。それがなりそめの始まりだった。
 その後、さつきが小学校の教諭として市内の学校に赴任した。
 新任教師の研修会が地元で開催されたとき、会場で後ろから不意に声をかけられた。それが翔太だった。
 お互いに「がんばってるね」とエールは交換したものの新任教師は辛いらしく、その後も電話でよく励ましあった。
 翔太の勤める学校は県内の山間地の町で、合併で生徒数が増加し規模が大きくなっていた。
 さつきはこの春から翔太と同じ地区の学校へ赴任することになったが、もっと奥深い山間部の少数校である。
 これを機に二人の思いはひとつになり、一緒なろうと決めた。
 今日は縁結びの神様に御礼参りをして来ようと神社境内を目指していた。二人には積もる話が絶えない。
「翔太さん、今度私が行く学校は生徒が十人もいないの。学校敷地は広いけど」
「のんびりしていていいじゃないか。少しはじっくり教育に力を入れてみたら」
 翔太は半分冷やかしながら応えた。
「学校の周りは山と杉林ばかり、それに猪と猿。後は校庭にある戦没者の句碑と二宮金次郎さん」
「それだけいれば話し相手に不足はないよ。金次郎さんがいればそれだけで教育者が一人増えたも同然だ」
「それどういうこと。ただの銅像よ。お猿さんのほうがまだましかも」

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(龍尾神社梅園)

Tatuojinjyaume


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