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2023年3月11日 (土)

鶴氅のゆくえー「尊徳の遺品」顛末記(6)

 祖父は書斎から持ってきた粗末な装丁の本を開き、さつきに向かって再び読み始めた。 
 食卓にあった姫スイカはいつの間にか、どれも皮だけになっており、側で祖母も祖父の話に聞き入っていた。
「そうして鶴氅は十湖様の手元に入ってきたわけね」
 スイカの皮を片付けながら祖母が納得顔で言った。
 時代は今から百年以上前のことであり、鶴氅はそのまま現在まで残っているのだろうか。
 さつきはいつの間にか頬杖を突きながら話を聞いているふりをして、眠りの真っ最中だった。
「さつき起きているか」
 さつきは、はっとして目が覚めた。
「じいじ、今でも二尊堂はあるの」
 祖父は寝ているとばかり思っていたが、さつきが突然話題についてくるのでびっくりした。
「あるよ。ただ場所が変わったのさ。十湖様が生きていた頃は、自分の敷地内に二尊堂があった。今は他の神社の境内に併設しているらしい」
「すると、やっぱりそこに鶴氅があるのかしら」
 さつきは少し不安になった。
「それなら一度そこを訪ねてみるか。さつきも行くか」
 祖父はさつきに約束をさせようとした。
「行くよ。夏休みの宿題の作文にでもしようかな」
「現金なやつだな。まあいいか」

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