俳人十湖讃歌 第127回 二俣騒動(5)
そのまま滞在し月が変わり、再び蓮台らを伴って各方面の話を聞いてまわったが、まったく解決の糸口が見えず、縺れた糸は容易には解けないと苦難の連続であった。
我もその渦に巻かれつ秋の水
秋の野のもつれも解かず暮れにけり
八重雲をはや追ひ払へ秋の風
二俣に滞在し一ヶ月余が過ぎたある日、蓮台の仕切りで句会を開催した。
「鹿島の渡し」をお題に地元俳人仲間と句を詠んだ。
十人程度が旅館の二階に集まり賑やかな句会となり、十湖には久しぶりとあって、酒の味も五臓六腑に染み渡り少々酔いが回った。
玉とちるのきの雫や月の雨
秋風といふ風の吹く夕べかな
聞くことは思ひもよらず小夜砧
自らの句はどうにもしょぼくれているなと反省していると、どこからともなく三味線の音が川風に乗せて聞こえてくる。
十湖は暫くして心が落ち着いたのか、この苦境を乗り越えなければ、俳句も詠めなければ酒もまずいと決意を新たにしていた。
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