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2023年10月 7日 (土)

俳人十湖讃歌 第126回 二俣騒動(4)

それで校舎を増築するのか、移転するのか、という問題に発展したというわけか」
「町としては寺にこれ以上迷惑をかけまいと他への移転を議決し、皆原か金谷の地を候補としていました。すると議会は皆原案を採択し、これで全て丸く収まるかと思われたのです」
「そんなに難しい問題ではないのに結果は収まらなかった」
 十湖が納得したような顔をしているのを見て、それまでじっと側で聞いていた蓮台が口を出した。
「ところが世の中そう簡単には終わらせないですよ。このとき町長が病気辞任したもんだから、新町長の選任を待つことになってしまったんです。それで今年、新町長に見付警察署長だった河野光三郎が就任し、前町会の議決を了承して進めるんですけど、建築経費の不足分を一般町民からの寄付で賄うことを改めて提案したのです。要するにこの案では経費がかさむというので、住民負担を求めたんです」
 すこしばかり蓮台が感情的になっている。代わって和尚が続けていった。
「ところが二俣南部の議員が猛反対し、それなら金谷案も再考せよと迫りました。だが町長は、既に前町長の決めたことで用地買収が済み登記も済んでいる。と言って撤回しないのです」
「二俣南部の議員は金谷の推進派ということかな」
「そうです。町長の言い分に怒った南部の議員は議場を退場し、以後校地問題の審議は応じないという態度を固持しました。仕方なく町側は寄付案を撤回、校地問題も再検討を約束しました」
「それならば、これで収束に向かうはずだが。なぜだ」
「こちら立てればあちらが立たずで、町会が南部の言い分を通したので北部の出身議員は猛反発。またまた町会は流会し、学校敷地問題が暗礁に乗り上げた事態に陥ってしまいました」
「どうも大人たちの感情が先行していて、解せんところがある」
 十湖は和尚の話で十分理解できたと応えたが、成り行きはいかんともしがたいと頭を傾げていた。
 その夜、十湖は和尚の紹介で南部の関係者と北部の関係者の言い分をそれぞれ聞くことにした。
 双方の言い分を聞けば聞くほど、この騒動は「二俣の南北紛争」に発展していくと十湖の気持ちは憂鬱になってきた。
 だが、つぎの日は何もせず、酒を飲んでは町内の様子を窺っていた。

 Machinaka

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