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2024年2月 3日 (土)

俳人十湖讃歌 第146回 息子の戦死(5)

 九月十七日夜、十湖は同吟会主催の連歌会に出席した。
「宗匠久しぶりだ。ますます元気なようだな」
 掛川在住の宗匠が十湖の座に近寄ってきた。かつて農学社の活動でも顔見知りの男である。
「ところで、宗匠の甥の八木吉平が戦死したよ。知ってたか」
「いや知らん。いつ亡くなった」
「八月三十一日遼陽で戦死したと聞いた」 
 十湖はたしか籐吉も同じ隊にいたはずだと思った。だが死んだのは籐吉ではなくて胸を撫で下ろした。
 三日後、連歌会で同席した掛川の宗匠から十湖のもとに急な連絡が入った。
「それでな、お前の息子藤吉である近藤登之助が首山堡塁付近でどうも亡くなったらしいと言うんだ。同じ三十一日に大隊長の身代わりとなってね」
「そんなばかな。聞いてはいない。何ら誰からも連絡がないしな」
 十湖が信じられないという顔をして睨み付けた。不安は隠せなかった。
 そのことを裏付けるように翌二十一日、気賀町役場から「出征者が自宅へ送った手紙に二中隊近藤軍曹殿には名誉の戦死をせられたり」とあったとの知らせがあった。
 同日、役場より公報が入る。もはやうそではない。戦死は事実であった。

     よく死んだ出かしおったと魂迎ひ
          我が家にも戦死者ありてあきのくれ
     見上るやくれてのあとの秋の空

Kuhi

 

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