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2024年3月23日 (土)

俳人十湖讃歌 第159回 姨捨紀行(12)

 欽采の自宅更科庵に杖をとどめること数日、連歌を巻き、地元の俳人等と対吟を愉しんだ。
 夕餉に少しばかり酒が進んだときだった。欽采が半紙ほどではないが短めの紙に描いたものを持ってきた。
「師匠、これは私が画いたものですが、いかがですか」
 十湖が注いだ杯の酒を口に入れようとするのを、欽采が塞ぐように目の前に差し出した。
「これは誰の顔じゃ。いい男だな、美味く描けている」
 十湖は上機嫌で冷やかす。
「言うまでもなく師匠の姿ですよ。せっかく信州へ来てくれたのに、去った後に何もないのは心もとない。私が記念に残しておこうと描いてみました」 
「気に召すも召さぬもないわい。画はうまくできている。さすが欽采だ。だが余白が淋しい。わしが揮毫しよう」
「はい、ぜひお願いします」
 弟子が持ってきた筆で、十湖は欽采の画に書き足し、あっという間に句を披露した。

  山々を船に数へて月ひと夜

 この句はここで発句したのではなく二十年前に伊勢へ行脚した折に詠んだものだった。
 今でも同じ心境にいると思い、この句を添えたものだった。 
 それに信州へ来ては、そばの味にも舌鼓を打ち何度食べても飽きないと堪能していた。

  更科や月にまたこのそばの味

 皆で象山にも登り吟行をした。
 まさに心から楽しめた信州行脚だったと月にも欽采らにも感謝した。
 早いもので暦は秋へと移り十月の末を迎えている。
 来月の初めには倉科村で建碑式を挙行する予定があり、ここらへんで少し息抜きでもしようと、十湖は一行に声をかけてみた。

Jigazo

 

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