俳人十湖讃歌 第167回 芭蕉忌(5)
庵へ戻りそろそろ暇を乞うつもりでいたところ、十湖から明日は芭蕉忌を催すので見て行けと促される。
以下に鷹野弥三郎(俳号柏葉)の見聞録を記す。
明治四十年十一月十七日大有庵の芭蕉忌
潚々(しゅうしゅう)と降り連なる時雨は実に翁忌を偲ばれて去る十七日一層の風流さ、みやびやかさを増し いともよき日和なりき。
十湖主催の会は各地、各国の俳人から送り来られる朗詠佳吟が去る七,八日より引きも切らず集まり積みて山を成し、献詠千余句に及ぶ。
当日午前九時ころより雨の中を三々五々集まり来て十時半ころには五十余名と多数なり。祭文を送りし俳人は細江の野末寸穂ほか十数名。同庵当忌のため数日前より俳人らが入りふけり、立ちふけり下俳諧を成しつつあり。
当日の来賓中には抹茶の佳雅堂、書家司馬老泉、山下青城の二氏、伶人には竹石、随処、如鶴の三名なり。各俳士は十時ころより数日来のごとく下俳諧に努め、庵主は喜悦満面に溢れていたり。
降り連なる雨は正午に近づくころより止み朦々たる雲はいずれにか去りて碧空高く、清く、陽は輝きて小春日和となれり。それより来会俳一同庵主が自慢の蕎麦の饗応に大いに腹を肥やして午後一時より翁の追善となり。
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