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2024年6月 1日 (土)

俳人十湖讃歌 第174回 出雲の風(2)

 翌年、鳥取県の俳人仲間から十湖のもとに句会の招待状が届く。
 予てより楽しみにしていた出雲行きが実現しそうなのである。
 行きたくて仕方がないのであるが、妻をはじめ弟子らから金策は困難だと云われればあきらめざるを得ない。
 この時は金の工面もつかず、やむなく中止にせざるをえなかった。
 十湖自身は旅の準備をしていたので、行くことができなくなったとはいえ出雲への未練はある。
 「金さえあれば行けたはずなのに」
 ひとり悔やみながらも、諦めは速い。
 気晴らしに笠井の町をぶらつくかと歩き始めた。
 菩提寺でもある源長院の参道に差し掛かったとき、ふと閃いたことがあった。
 「座禅堂に籠もり、出雲に行ったつもりで心に見える風景を吟行してみてはどうか」
 と少しは気休めになるのだろうと思った。
 住職に声をかけ座禅堂に足を踏み入れると、新緑の木々の間を抜け涼しい風が行過ぎていく。
 足を組み半眼にして今日の出来事を振り返っていた。これでは眠くなってしまうではないか。
 本来曹洞宗の坐禅は只管打坐(しかんたざ)でただひたすらに坐ることであり、何か他に目的があってそれを達成する手段として坐禅をするのではないはずだ。
Sando
(現在の源長院の参道)


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