俳人十湖讃歌 第178回 出雲の風(6)
出雲では連日、当地の門人たちが名所、旧跡を案内してくれて句を詠んでいる。
風雅を愛し蕉風を名乗る十湖宗匠にとって出雲地紀行のクライマックスには、安来港、出雲清水寺、出雲大社、その先の大山へも立寄り、山陰の富士山である伯耆富士を愛でている。
ところが、季節は梅雨真っ最中で大山駅(現在の大山口)へ降り立っても靄でその先が見えない。
どうしたものかと思案に暮れていたところ、十湖の祈りが通じたのか靄の一部が少しずつ切れてきた。
大山の頂上がくっきりと眼前に現れたのだ。
大山が富士山に似て見えるのは、米子方面かここらあたりしかない。それを承知で駅をり立ったのか、それとも単なる偶然だったのか。
靄の中にさぐりあてたり伯耆富士
大山を目の当たりにした雄大な景を十七字に収めた。
旅の途中に京都の新聞で「出雲路から」と題し宗匠の記事、俳句が紹介される。
出雲大社に詣でて詠んだ句は
万世や神の出雲の風薫る
この句をどこかで聞いたことがあるだろうか。
出雲への句会の招待状が来たときに、金の工面ができずに座禅堂で行ったつもりで詠んだ句のひとつだった。
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