俳人十湖讃歌 第188回 盟友(3)
かつての東北の旅が縁で、二人の間を俳句の友としてとりもっていたのだ。
十湖は何度か弟子になれと言っては見たが、翠葉は一向に動じなかった。
翠葉の言い分は
「俳句だけは地元でコツコツ学んでいこうと思っている」
からと十湖の申し出を断わっていた。
十湖はいったん言い出したら後には引かない男だが、この時は負けてしまった。
しかし、今回の手紙には即、返事を書く。
盟友である翠葉の依頼になんの躊躇う理由があろうか。
十湖は翠葉を盟友と呼んでいた。
「俳句をするなら、今後は一生わしと共に歩め。いつでも力になる。そうだ、お前とは俳句の盟友だ」
この言葉で翠葉は納得した。
その後、彼が俳句のことで悩むと手紙を書いては送ってきた。
字は丁寧で文は簡単明瞭、感情の起伏はなく、十湖とは全く反対の性格のように思えた。
そのうえ選者としての十湖のことばは素直に受け入れていた。
何れ俳人としても大成していくことだろうと期待していたのである。
十湖にとって盟友と呼ばれる友に、もう一人東京に住む鈴木藤三郎がいた。
財界人であり政治家である彼は報徳精神が人一倍強く出世頭であった。
十湖の人生の大きな柱は俳句と報徳の普及である。
報徳の盟友が鈴木藤三郎なら、俳句の盟友は石倉翠葉であった。
(報徳の盟友 鈴木藤三郎)
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