十湖奇行逸話

2016年1月26日 (火)

十湖奇行逸話 目次

 40話を紹介して十湖奇行逸話は完結です。
 作者は十湖の門人野沢十寸穂(ますほ)です。この原資料は十湖没後印刷された「慶悼録」に収められているものであり、順次紹介しました。
 逸話の数40話中13話は「十湖発句集」に収められ平易な文章に書替えられていますので、機会があれば浜松市図書館郷土資料でお読みになっていただければ参考となるでしょう。
当初、紹介するにあたって現代語で訳した方がよいかなと思い、しばらくは続けましたが、途中から原文どおりとしました。誤字や脱字もありましたがその点はお許しください。
 以下目次を掲載します。

1根くらべ
2大洪水で築堤
3県令を叱咤す
4十湖の奇計で無代
5鯉一足の押買い
6方廣寺の行在所
7恩想の善導
8道路郡長の尊称
9十湖賊を罪せす
10橋銭で十湖怒る・
11乞食を集めて演説
12響世の名吟
13松實の利用癖
14翁の飯茶腕
15年始客を驚かす
16十湖の微苦笑
17紛糾の調停
18居士号の一句
19我家は郵便局
20林子年の墓に詣づ
21殺生の禁を破る
22鶯張の座敷
23翁稲荷を祀る
24翁の金婚式
25乾涙は熱涙に勝る
26翁の時間励行
27展墓と菓子の買占
28棟札で感激す
29翁の勤行報徳
30翁の肖像嚆矢(こうし)
31宮殿下の御賞詞
32汽車は育切符
33翁と徳川家達公
34百回のお茶代
35葬式の広告
36無一物ぷり
37村の誇の図書館
38十湖様のおかげ
39浜松で喜寿祝賀会
40瓶中の白髭

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2016年1月19日 (火)

十湖奇行逸話40 瓶中の白髭

  翁が十二年前東京に遊び六十日あまり花笠庵翠葉宗匠の虚に逗留してイザ帰郷といふ時に翁は尺余の白髭を切って私が死んだと云ふ事を聞たら庭内句碑の側に之れを埋めて貰らひたいと翠葉宗匠に頼んだので其の白髭を小瓶に納めて保存してあったが大正十五年七月十日に翁の死んだ事を新聞で見て翠葉宗匠は約の如く直ちに瓶中の白髭をば句碑の側に埋め二十五日の葬式には遥々来て会式し手向の吟と共に「瓶中の白髭」なる一文を浜松新聞に掲げて弔意を表した。

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2016年1月12日 (火)

十湖奇行逸話39 浜松で喜寿祝賀会

  翁は大正十四年喜寿の賀齢に達したので翁の誕生日三月十七日大蕪庵に於て盛宴を張り記念の大句集も濱松城に発表した事は普く人の知るところであるが翁と同齢の岡部譲、名倉喜一郎外四大人の喜寿記念就祝賀会を浜松五社公園演武館に於いて催ふされ出席者全部に翁の半折一葉及び岡部譲翁の半折一葉其他記念品を頒ちたるは翁の名誉たる而己ならず遠州人士の大いに誇りとする所である

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2016年1月 4日 (月)

十湖奇行逸話38 十湖様のおかげ

  余の居村中善地と五六丁を隔つ新築高井伊助方より大正十三年三月六日午後零時二十分発火し折柄の西風に猛火は忽まち四隣に広がり被害世帯二十二全焼家屋十九半焼家屋一損害見積高五萬八千七百円未曾有の大火で学校役場及翁の居宅は生増風下で甚だ危険であったが翁消防隊を指揮し.一方罹災者に金品を送り焚出し万端に努めたので十潮様のお蔭で助かったと生紳様のやうに崇敬した

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2015年12月29日 (火)

十湖奇行逸話37 村の誇の図書館

  翁の居村豊西村図書館は大正十一年学制頒布の五十年を記念せんがため大正十二年一月-日協議の上着手し七月一日に開館式を挙げたが遠近の有志が翁より此計書と聞いて多額の寄附と書籍の寄贈を受け郡下屈指の図書館と認められたるに至った事は郡下他に例のない内容外観の両全を収めたは翁の尽力に依るもので村民は大いに翁の徳を多とし同年の秋同窓会の図書倶楽部を合併した。

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2015年12月22日 (火)

十湖奇行逸話36 無一物ぷり

   大正十二年畿内方面の有志より漫遊を懇請せられ旅装を調べられる折加賀の金澤の有志からも翁の来遊を促かして八十円の放費を送ってきたのでそれで門人を従へ大和方面へ向たがいつも金に頓着せぬ者の事とて忽まち浪費を遣り果たし翁を門人がまいたか門人が翁を置去りにしたかは判らないが翁はあればありたけ財布に残さないといふ金放れの奇麗に門人は行く先々で旅費の工面に弱らされたと。

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2015年12月15日 (火)

十湖奇行逸話35 葬式の広告

 翁は門人帳を印刷に附した事も何遍かあるが大掃除の時入門者の台帳を紛失して門人がドレ程あるかわからないので門人名簿の一策として十湖死去すといふ広告を出し葬式道具を新調して葬式を行ひ全国から集った香料は自分が全部費消したがその時初めて凡そ一萬余人の弟子があることを知った。これは翁一流の遣り方で翁の奇才縦横なる逸話は山程あるが是等は其の中の尤なるものである

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2015年12月 8日 (火)

十湖奇行逸話34 百円のお茶代

  翁は某富豪(特に名を秘す)とは大の不仲であったが此仲間同士が呉越同舟の思ひで弁天島の某旅館に遊んだ某富豪は名代のシミッタレで一文の茶代も置かないのを見た翁は帰り際に玄関で旅館の主人を呼んで「オイ百円茶代をやるから請取を書け」といはれ主人は早速頭をペコペコして請取書を出したが現金のお渡りがないので遠廻しに催促すると某日はそのままズンズン帰って翌日某富豪を訪づれ俺が百円茶代を立替へたとて百円を取り旅館に送った。

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2015年12月 1日 (火)

十湖奇行逸話33 翁と徳川家達公

 徳川家達公が静岡県育英会の総裁として濱松へ来られ圀光館に於て官民合同主催の歓迎会を開きし際翁も出席して公に歓迎の句を呈するや公は翁を引見歓談を交へられ夫れより鹿谷園に於ける午饗会に於ても渡邊市長や井上歓迎委員長より翁の俳譜に堪能なるを公に紹介されて更らに鹿谷園即興の句を公に呈したるより特に当日の記念として色紙揮竃の御懇望ありて翁は思ひ掛けざる光栄を荷つた。

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2015年11月26日 (木)

十湖奇行逸話32 汽車は青切符

  翁は無銭旅行を以て有名だが官営の鉄道ばかりは無賃で乗ることは出来ぬとこぼしながら汽車に乗るときは青切符と極って居てそれをしらずに赤切符を買ってやろうものなら自分の銭を足して青切符に代へさせ晩年はドンナに近いところでも人力車に乗り車賃はいつも有る時払ひで馬車でも自動車でも翁だけは賃銭を催促されたことはない又遠州一円の車夫では翁の顔を知らぬものはない乗物は大久保彦左工門式に大威張りであった

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