俳人十湖讃歌 第185回 二人の貧乏神(6)
翌日、垢石は風葉と共に警察へ出頭する。
そこには顔中真っ白に包帯した鷹野がいた。
包帯は既に血が滲んでおり痛々しい。
十湖は静かに鷹野の説明を聞いていた。
要するに事件のきっかけは都落ちした尾崎紅葉の弟子小栗風葉が美しいつぎと近づきになろうとして、酒友の新聞記者佐藤垢石に助力を頼んだのが事の真相だったらしい。
鷹野にはつぎを想う十湖の顔に怒りを押し殺しているのがわかり、事の真相はともかく今回の自分の軽率な行動を反省していた。
さて、その後の垢石の足取りはどうだったのだろうか。
貧乏神はなおいっそう垢石に付きまとうようになり、借金取りに追い詰められて夜逃げを敢行する。
地図を出して睨んだら四国の国が一番遠い。九州が最も遠いけど鉄道が通じている。
四国にはそれがない。ただそれだけで豊橋の地から姿を消したのであった。
一方、風葉は前年に豊橋へ隠棲してきていたので、亡くなるまで同地で過ごしたという。
(完)