吉川英治名作選「桧山兄弟」
今年は吉川英治の著作にどっぷりとはまっている。
元はといえば「親鸞」を読み始めて、鎌倉時代へと遡り、その歴史への好奇心は「新平家物語」にたどり着いたのである。
さすがにこの物語は大作であったが、記憶に残る歴史の復習ともなり、読後は満足感で満ちていた。
次に「私本太平記」を手にし第1巻を読み終えたところで自分の分身が「お疲れ様の声」を聞いてしまった。これも巻数を見て長編であることに一服感が出てきてしまったからだった。
だからといって作家吉川英治の著作から遠ざかりはしなかった。
そして手にしたのは「檜山兄弟」である。
内容を知らぬまま読み進むうち、明治維新を目指し歴史の歯車となる主人公の活躍に一喜一憂、まさに痛快時代劇である。物語の中に様々な作者の仕掛けがあり、頁を繰る指に力が入ってしまう。
幕末維新の実在人物、すなわち高杉晋作や大久保、西郷たちが数多く登場する。だが中心軸は主人公檜山兄弟である。同時に忘れてはいけないのは、イギリス公使パークスを国際勤王派として、フランス公使ロッシュを国際佐幕派として登場させている。これによって当時の国際情勢を視野に入れたグローバルな視点が幕末維新小説として画期的な試みを成している。
ほかには兄弟が危機一髪のところで海賊船が突然現れ彼らを救う場面は圧巻であった。
硬い歴史小説を読む合間には少しばかり軽い?この物語は一読に値する。しかも読後の清涼感は梅雨時には最適な一冊でもある。
映画にでもなったらどんなにか見せ場が多いことか、楽しい娯楽時代物になることだろう。
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