影の風情
自宅の座敷に仰向いて天井を眺めている。
今年は夏バテはなかったようだと自分の体調管理を振り返っていた。
それは先日の健康診断が無事終わったことを安堵していたのである。
数年前に胃のバリウム検査で異常が見つかり、精密検査を胃カメラで実施した。
この初体験はあまりにも辛く、二度とするものかと決意させ、以後胃の丈夫を願ってきた。
さて例年どおり、成人病検診の時期となり、主治医から胃の検査はどうかと勧められた。
どこも悪くないので辞退しようとしたら、
「ウチでは鼻から内視鏡をするのを勧めています」
といわれ、結局いわれるままにする羽目に。
前回の初体験で絶対するもんかと決めたのに、医者の言葉にいとも簡単に合意してしまった。
後悔したのは検査の前日まで、検査室に入ってしまえばまな板の鯉である。
数分後、後悔は安心に変わった。検査中に結果がみえたからだ。
今、自宅へ帰り少しばかり検査で疲れた体を横たえて、破れ障子を見た。
こんな影が映っていたのか。座敷の外に植えてある夏の日蔭用のゴーヤの蔓。
今や終末期だ。葉は萎れ、実は赤く熟れ腐っている。蔓はかろうじてネットに縋っているばかり。
もし内視鏡の初体験を恐れて実施していなかったら、将来こんな影のようになっていたのかもしれない。
影の風情は自分の心中まで見透かしているようだ。
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