秋彼岸
台風一過で清々しい秋風が立つかと思えば、何とまた、この日の夕刻などはサメザメとした雨に降られてしまった。秋の彼岸である。
久々に外で酒が飲めるとあって、少しばかり台風の進路を気にしていたが今回ばかりは一日違いで中止になるところであった。
幹事には心労をかけたことを詫びねばならない。とはいえ自然現象のことであるから詫びるのも変な話だ。むしろ皆で開宴できたことを喜ぶべきである。
たまにあう仲間だと顔を合わせた時には、つい衣装に目がいってしまう。
元気で過ごしているかのバロメータにもなるし、話題の糸口にもなる。色柄の長袖をたくし上げている者から、薄手の背広姿まで様々。
この集まりには女性がいないから、年相応の地味な衣装が会場を占めている。
台風が去って夏の暑さから秋の雰囲気が漂い始めたことであり、出かけのスタイルにはそれなりの衣替えが必要であった。
最初は夏用のカジュアルな服装が良かろうと着替えてみたけど、どうしても袖口あたりがスースーする。
ここはやはり長袖にした方が無難である。思い直してクローゼットの中を探す。
吊るされているのは真っ白な長袖のワイシャツばかりが目に付く。
最近は出かける機会が減ったこともあって、妻が気を回してくれたのだが、白シャツは冠婚葬祭用である。普段の着替え以外は、近隣、親戚、縁者の葬式と盆であり法事が主な着替えの対象なのだ。
衣替えといって季節のかわりめに衣装を変えていた頃が懐かしくもある。
こんなところにも自らの老いを感じさせられ、妙にシンミリした。
宴会場に安藤くんがやってきた。彼は茶色縞の半袖シャツだ。席へ着くや否や体を縮みこませて周りを眺め
「すみません。クーラーの温度下げてくれますか」
これが今日の第一声だった。
これからは七十二侯では「玄鳥去 (つばめさる)」。子育てを終えたツバメたちが深まる秋を感じ、南へと飛び去って行く頃である。
わが老いもまた徐々にではあるが深まっていくのだろうか。
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