びわの焼酎
後悔しつつ傷心の思いで自宅へ戻ると、
「何をしたの。急いで傷口を洗って、早く」
妻に急かされて、夫の権威は爆発した。
「応急処置をしたから大丈夫だ」と言い返すが、聞かない。
アマガエルが現れたその日、鎌で切った指と
手の甲の血ノリとシャツが染まっているのを妻は見ている。
「洗ったらビワの焼酎で消毒するから。これが一番効果がある」
妻のいう焼酎は自慢である。
かつて果実酒だと思って飲もうとしたことがあったが、この時はえらく叱られた。
妻は自らが包丁で手を切った時には、必ずこの処置をして何度か救われたことに自信があるのだ。
もはら黙って従うしかないのである。
妻に何を言っても無駄。カエルのツラに小便だ。
妻の処置が終わった。
焼酎漬けされた指の白い包帯を見て 、なぜか肩の力が抜け、落ち着いた心地であった。
それから3日後指に傷後は塞がり、今では包帯もとれ指を曲げても何ら支障がない。
そっと治った指を見せると戸棚から瓶を取出し、
「先代の母からもらった焼酎が効かないはずがない」と誇らしげである。
これじゃ飲めるはずはない。
お茶碗に入っていたときは飲もうと思ったことがあったけど、こうして見せられるとやはり薬でしかないか。
聞けば焼酎に浸けたのはビワの実ではなく葉っぱ、作って既に10年が経過した代物だという。
今回ばかりは説得力ある妻の話に完敗であった…ポン、ポン、ポン♪
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