カテゴリー「路上観察」の記事

2022.03.29

桜の秘密

 界隈の東に流れる大川の堤には、先週あたりから桜が咲き始め日曜日にはほぼ満開となった。
 地域ではイベントを企画し、地元の産物とお菓子を用意し花見の客をもてなすとか。
 界隈の菓子店には花見に共感して桜餅の幟でも出ているのかと思ったら、それは「柏餅あります」である。
 一瞬、桜餅ではないのかと見間違ったがそうではない。
 この店のあんこは昔ながらの味で好みだ。そりゃあ桜餅よりあんこの量が多く含まれている。
 しかし、せっかく桜が咲いたのだから桜の葉っぱの香りを餅の味とともに楽しみたい。
 だって桜の木に茂っている葉っぱをもぎ取って嗅いだとて桜餅の葉の香りはしないのだ。
 桜餅を食べると少し塩辛く餅の甘みと混ざり美味しく感じる。同時に微かな香りが心地よい。
 ある学者先生が桜餅のおいしそうな香りの成分は「クマリン」という物質で、葉を塩漬けにすることで香りが漂ってくるという。
 しかも塩漬けにしなくても葉を手でよく揉んで揉みくちゃにすることでも同じ香りが漂い始めるらしい。
 葉を揉みくちゃにすることは葉を食べようとする虫の食害にも通じ、葉を傷つけた虫はクマリンの匂いで食べることができず退散する。
 要するに桜の防御反応の結果、虫にかじられた傷口からの菌の侵入を防ぐと考えられている。
 なるほど、葉そのものが香るというのではなくて、それなりの理由があったのだ。
 きょうも菓子店には「かしわ餅」と染め抜いた緑色の幟がはためいている。
 まだ売れ残っているのかと心配になるが、甘い物が好みの人間にはあんこがいっぱい入っている菓子がいい。
 5月の節句にはまだ早いが、買って家族でご相伴にあずかろうかと思っている。
 そうそういい忘れたが、桜餅に使われる葉はオオシマザクラの葉だという。
 この葉が大きくて柔らかく強い香りを出すから、桜なら何でもいいわけではないらしい。
 桜も秋には枯れ落ち、落ち葉が土に返り若葉が育つ糧になるが、その頃枯葉は虫の嫌がる香りを放って親木を虫から守っていると学者先生は公言する。
 秋の雨あがりの日に枯れ落ちた桜の葉っぱ一枚拾い上げて香りを嗅いでみると、桜餅の香りがほのかに漂ってくるというが試してみたいものだ。
Sakuranotutumi01Sakuranotutumi02


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2021.04.02

昆虫鑑賞へのいざない

 最近、孫が昆虫に興味を持ちゴミムシ、ゾウムシ,フンゴロガシなどの小さな虫たちを発見してはファーブルの図鑑を見て楽しんでいる。
 そのせいで自分までも俄かに昆虫博士のような顔をして、もっともらしく子らに説明しては優越感に浸っている。
 と、ここで先日散策中に見つけた玉虫色の昆虫を検めて自分の知識に「なぜ」と問いかけてみた。
Q1 どうして今の時期に現れたのか幼虫でもなく成虫として。
Q2 成虫だが足も手もない。触角もない。
 いずれも難問だ。
 庭の草をむしっていたら、土の中からこがねムシが仮死状態で出てきた。
 しかも色は褐色でくすんだ茶色。体は成虫だったので気になってしばらく観察していると、みるみるうちに羽の色につやが出てすぐにも飛び出してしまった。
 幼虫から孵って成虫になったところで見つかったので驚いて飛び出したのか。

 この例から撮ったタマムシを検討すると、羽化したばかりの成虫であったのか。 
 羽化して地上の空気中になじもうとしていたところ玉虫色に変化し始めた。
 山中で発見した昆虫を図鑑で調べると「ヤマトタマムシ」ではないかと考えられる。
「だから何だ」と問われても「これは玉虫色のタマムシです」とムシするしかない。
これを機に昆虫への興味は尽きなくなった。

Futamata06

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2021.03.20

八方塞がり

 電車で郊外へ撮影に出たところ、見たことのある光景に出くわした。
 当ブログにもUPしたような気がしたので、過去を遡ってみた。
 4年前のことだった。
 写真は現在目の当たりにしているものと全く同じで、撮った角度も同じとは我ながら驚いた。
 その写真は廃車になった黄色いフォルクスワーゲンが放置されたもの。
 ただその時の写真タイトルが違っていた。車がフォルクスワーゲンなので「カブトムシ」と呼んで揶揄していた。
 だが、今眼前にあるのは八方塞がりになってしまった車の存在である。
 「カブトムシ」はあれからも朽ち果てるのを避けようと苦心したに違いないのだ。
 結局、力果て何をしてもダメ、窮地に立たされたが解決せず移動もできなかった。もはや八方ふさがりの状態のまま現在に至っている。
 人間だって同じことだが、形が残っているところは人間とは違っている。

Wagen
 

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2020.01.05

松竹梅

 正月三が日が過ぎると、おなかの廻りが少しばかり重たいので、腹減らしに近くの公園に足を運ぶ。
 冬鳥の鳴き声に導かれ藪を突き進むと小さな社の前にたどり着く。
 暮れに草刈りをしていないせいか眼下の町の風景も見降ろせない。
 社は小ぶりであまり人が来ていない様子。
 せっかく来たので神様にお参りすることに。
 小銭を投げ入れれば賽銭箱の音だけで寂しいものだ。
 手を合わせ祭壇をのぞき込むがガラスの反射で中の様子は見えない。
 そのかわり扉の前に忘れ物なのか酒の小瓶が置かれているのに眼がいった。
 どうでもいいことなのだが、つい余分なことを考えてしまった。
 誰かが散歩に来て、ここで酒でも飲んで空き瓶を捨てていったのかと推理する。
 だが、小瓶の蓋は開けられていないから飲んだわけではないのだ。
 瓶は「お神酒」とラベルが付いている。
 なるほどこれで神様に上げたわけだと合点がいった。
 酒の銘柄は「松竹梅」。正月飾りにはふさわしい。
 境内には温かい冬日が差し込んでいる。
 社は誰も来ないどころか、大切にされていることを知った思いであった。

 R2-025

 
 
 

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2019.06.13

或る休日

 休日には周りの景色に目を配るさっちゃん。
 何でもない庭の植え込みの下を覗いていたら、トカゲがエサを探しているのかウロウロ。
 小さな石をどかしてみると、突然体を丸くするダンゴムシたちがワサワサ。
 急いで逃げまくる黒光りした虫も草葉の陰に入り込む。
 子供の目線の先には、どこからともなく虫の息遣いが聞こえてくる。
 ふと、顔を上げたら、大柄な虫が空中旋回して着地し羽を閉じた。
 「かみきり虫だよ」とさっちゃんは歓声をあげてじっと見つめてる。
 虫はさっちゃんをにらみつけ、「お前は誰や」と呟いたとか。

 

Kamikiri_001s

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2019.02.09

初かわず

 立春の声を聞いたら、つい鍬を持ってしまった。
 例年なら、畑を耕し始めるからだ。
 しかし、この日は本気でするつもりではない。
 腰の痛みに耐えかねて、軽く鍬でも振ってみようと
逆療法を試みるからだ。
 案外いけるなと気を良くして、掘ったところをみたら
土の中から一匹のかわずが現れた。
 座ったままの状態で、体はふにゃとして気味悪く、びく
りともしない。
 まるで全体が透明なシールドに覆われているようで、眼は
あいているようでも開いていない。  それにしては、よくぞ鍬のえじきにならなかったものだ。  隣の畑では耕運機が唸り声をあげている。  これに巻き込まれれば「かわずバラバラ事件」となるところだが、
機械音からして目が覚めるから心配はなかろう。
 さてさて眼前のかわずをどう処分するか。
 今月の畑作業でじゃがいも種をまかねばならぬ。
 かわずの態度は、まるでそれを阻止する座り込みとも思えてくる。
 「立ち退き反対!」とでも抗議しているのか。
 初かわずは一時期、交尾産卵するため地上に出てくるが、用が済めば
再び土の中にもぐって3月中まで冬眠するらしい。
 しかし目の前のかわずは目を覚ますどころか、何もせず深い眠りに
入ったままであった。
 しかたなく、そっと土を被せ元のままにしておいた。
Nemurukaeru


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2018.10.27

死してプライド

 コスモスが風にそよぐ川縁は、散策するのに心地よい。
 しかもその風ときたら、夏の気配や台風とは違い、秋の冷たさを伴い颯爽としている。
 通りかかった家屋には家主が植えたであろう葉鶏頭の花が群がり、妙な存在感をまき散らしている。
 そんなこんなで歩を進めると、日のあたる川縁に忽然と蛇らしい影が現れた。
 長さは1メートルを超えるだろうか。
 わずかな皮を残して骨だけとなりミイラ化しているようでもある。
 干からびた蛇とでも呼んだほうがこの場にはふさわしく、鎌首をもたげている姿態が、死してプライドを誇示している。
 
Cosumosu

Miira02

(もう少し近寄ってみよう)
Miira01



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2018.09.21

寺田駅の郷愁

 立山から宇奈月温泉へ向かう途中の「寺田駅」は富山地方鉄道の本線と立山線が行き交う駅である。
  ホームは立山線と本線が別々にあり、1番から4番まで4つある。
 立山方面から来たので3番線で降りて、乗り換えのため2番線で待つ。
 電車が来るまでには時間があるので構内をぶらぶらすると、ホームとホームの間にトイレがあり、かつては賑わったであろう待合室もある。
 今では資材置き場になっているが、周辺の雰囲気が郷愁を誘っている。
 ただ、そこに立っていると、なぜか妙に違和感を感じていた。
 その原因は1番線ホームの看板である。
 よく見ると、ポスターなどの張り紙は正常に張られているのだが、数枚の看板だけは裏返しなのだ。
 富山市内の医院であったり、家具センターや洋服屋が表示されている。
 1番線ホームは富山市方面へ向かう電車が入るので、宣伝効果は有効だったはず。
 おそらく、かつては煌煌と明かりが入り、看板の示す情報を辺りに照らし出していたのだろうと推測する。
 ホームにはペンキの剥げ落ちた古びたベンチも置かれていて、記された企業宣伝は読み取ることができる。
 ローカル線は何処も同じ状況下と思うけど、旅を楽しむ者にとってはこの光景こそがローカル線の見せ場であり、古き看板なども大切な遺産ともいえるのではないだろうか。

[寺田駅3番、4番ホーム]
4bansen_3

[1番ホーム]
Ekikanban2

Teradaeki1

[1番ホームの看板等]
Ekikanban



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2018.04.07

桜を愛でる

 桜を見に少し遠出を試みる。
Nagoya01

 久屋大通駅から名古屋城を目指すと駅はあと一駅。
 期せずして満員電車に遭遇してしまった。
 黒いリクルートスーツに身を固めた新入社員たちで、まるで通勤電車。
 満開の桜の時期でもあり、その集団に押されて自然に名古屋城の門前まで誘導される。
  城内は場所により、種類により咲く時期が異なるせいか桜は今が盛りであった。
 それにしては、桜や城より自分の姿をところ構わず、自撮りしている若者をよく見かけた。
 言葉が違うことからして海外からのお客さんらしい。
 日本の季節、情緒を楽しむよりは、いずこも「花より団子」のようである。
 花の愛で方は時代を超越しているようでもあり、旧態依然なのかもしれない。

Nagoya02

Nagoya03

Nagoya04




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2018.03.31

散る桜

  開花したとの便りを聞いて、いつ行こうかと迷っているうちに1週間、遠目にも川堤の桜が見てとれる界隈にいて、やっと重い腰を上げる。
 途中、地元の俳人の菩提寺にさしかかると、寺の掲示板に目が留まった。

                散る桜残る桜も散る桜

 とある。註釈は書かれていない。
 地元の俳人の句かと調べてみると、良寛の辞世の句だ。
 なんにでも、たとえられる命のはかなさを詠んでいるようでもある。
 遠望する桜は近づくにつれ、少しずつ様子が違うのに気付く。
 折からの東風に吹かれて、既に散り桜となり、歩道に、道路にまで乗り出して舞っている。
 たった7日程度の時の経過は、桜の花びらの生涯をまざまざと見せつけてくれる。
 歩道に真新しく見える電話ボックスも、情報化の進歩によって、やがては消えていく運命なのだろうか。

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Chirisakura02_2


Chirisakura03




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