カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2021.10.23

「遠州の文化人」墨華堂エッセイ集

 たまたま図書館でこのタイトルに興味を惹かれ手にしてみた。
 冊子は今年8月に個人の方による出版物である。
 著者は墨華堂主人村越房吉氏、発行者は大谷洋介氏である。
 二人の共通点は地域の古書古美術に造詣が深いことで、大谷氏が村越氏からいろいろ教わったという。
 本書は村越氏が過去に付き合いのあった文化人に関わるエッセイ集であり、かねてから大谷氏が文を残すことを依頼していたものらしい。
 冒頭に大谷氏の序があり、その経過を紹介している。
「村越さんのお人柄から酒脱な文章で、私が前々から聞いてきたことが、今更のように思い出されました。この随筆集を私だけが楽しんでいたのでは、かつての浜松の文化人と言われた人達が忘れ去られてしまう・・・」
との危機感から発行に及んだとのことである。
 目次には高橋佐吉翁、画家間山龍明氏、俳人相生垣瓜人の名が見える。
 なお本書は誰にでも読めるような大文字サイズで印刷されており、高齢者にはありがたい。
 さらに著者が「古書古美術」の専門家のため、エッセイ中で「にせもの横行」の記述がある。
 愛好家の方にとっては必読の書となろう。
Ensyunobunkajin
A5判 P55仕様

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2019.12.19

老いてはカメラにしたがえ

 老いては子に従えとか、かわいい子には旅をさせよなんて昔から言われている。
 そろそろ自分も老いの境地へと入っていくのかと思うと情けないが、孫たち(子)の扱いには少しばかり同情するところもある。
 近ごろ、好んで見るわけでもないが、かつて見たテレビ番組が再放送されることが多くなっている。
「この番組は絶対見ているはずだから再放送なら見る必要はない。」
 と思ってタイトルをみると、やはり記憶にない作品だと納得し見ることがある。
 ところが番組が結末まで達したとき「ああ思い出した。これは前に見たぞ」ということがよくあり、見る必要がなかったのだ。
 最近、この傾向が読書にも現れてきた。
 図書館で好きな作家のエッセイを借りて来るのだが、ブックカバーのイラストを見る限り初めて手にする本だと確認する。
 だが、掲載されたグラビアを見て、俄かに記憶が戻るのである。
「ああ、これは一度読んだことがあった」
 無駄な時間を過ごしてしまったと後悔し反省しきりとなる。
 記憶喪失というのにはかなり大げさだが、認知症とも違うし、単なる物忘れでしかないはずだ。
 気が付くうちはまだ健康で、健全な精神を持ち合わしていると自分に言い聞かせている。
 やっぱり老いては子ではなくカメラにしたがい、好きな写真を撮っていることが一番性に合っているようである。
 Oitara

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2017.09.23

曼珠沙華点描

 街道から一歩入れば静かな住宅地そして田畑が広がっている。
 その田んぼの畦や川縁には、時期を違わず彼岸を告知するかのように、曼珠沙華が咲き乱れる。
 地域差があるかもしれないが、少なくとも今年は正確だ。
 街道の菓子店には、おはぎを求めて客の出入りが多くなった。
 そんな様子を垣間見て妻が店に跳んで行った。
 結果はアウト、品切れ残念!
 そこの店でなければならない理由はない。
 墓に行く途中のショッピングセンターで買えばいいだけことだ。
 この場面で、ふとどこかで何かが似ているところを思いつく。
 吉田知子の「お供え」今年の春読んだ小説だ。
 この本の表装が曼珠沙華(彼岸花)だったことを。
  
Manjyusyage02
 


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2016.11.20

秋葉街道 塩の道 竹林喜由写真集 

 木枯らしが吹き始めるとどういうわけか「塩の道」を思い出す。その想いを写真にしてくれたのがこの作品集である。
 著者はカメラ雑誌の月例フォトコンテストの常連でアマ写真家として知られている。
 住いは藤枝市だが、もともとは名古屋出身である。
 この作品集は静岡県に住いしたからこそ刊行できたと云ってもよい。
 タイトルのルートからすれば浜松の町村は春野町、龍山村(現天竜区)佐久間町、水窪町までである。
 著者は冒頭「塩の道ルートは物流の道であり、文化交流の道でもあった。秋葉街道は秘境ともいえる山峡の道であるが、開発の影響は由緒ある歴史の道を変貌させ、風化と共に「道」がその姿を消そうとしている。ここに消滅しつつある「道」を甦らせ、伝説や芸能そして歴史を掘り起こしながら、「道」を記録することは、先人たちの文化を守り、後世に伝える一助になると確信する。」と信念を持って読者に伝えている。
 塩の道という大きなテーマに著者が精魂込めて取り組んだ作品である。
 2000年第10回林忠彦賞受賞作品集でもある。
著者 竹林喜由 発行所 ㈱日本写真企画 発行平成12年Shionomichi


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2016.09.25

二俣線―地元写真家の刊行物

 雨が続くとどうしても戸外での活動は敬遠しがちである。こんな時は図書館で本を探すのも楽しい。さまざまな発見がある。
 郷土資料と表示された戸棚を見ていたらその中に写真集も含まれていた。
 写真愛好家による自費出版かと手にとってみると、自分にも記憶に残る光景が写り込んでいる懐かしい鉄道の写真集であった。
 郷土資料に残る「二俣線の詩 村木勝義写真集」は、昭和46年SLが廃止されるまで撮り続けた地元写真家の写真集である。
 平成13年に静岡新聞社の協力を得て最初の「二俣線の詩」が発行され、第2作目が平成15年、第3作目は平成23年に「二俣線の詩Ⅲ」が刊行された。
 著者は同書の中で「その時一緒に移しこんであるまわりの風景もまた大変貴重なものとなってしまった。」という。
 確かに今ではマンション、工場などが立ち並び沿線の風景も変わってしまった。この変貌ぶりは過ぎ去った歳月の重みを感じさせている。
 同書はモノクロの鉄道写真だが、地域の鉄道の歴史を後世に残すうえでは貴重な写真集である。

  Futamatsen02m

Futamatsen01m

 

※国鉄二俣線は現在第3セクターの天竜浜名湖鉄道(天浜線)に引き継がれている。


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2016.09.22

大竹昭子の「この写真がすごい」

 とにかく本のタイトルがすごい!
 氏の作品が掲載されているのかと思ったら、氏の写真評である。雑誌、作品集などから気に入った写真をピックアップし一冊の本にまとめたものだ。
 タイトルどおり、選ばれた作品には写真力があり読み手を圧倒する。それをさらに誇張するのは氏のコメントである。
 決して長いものではなく、作品を見たとき瞬間浮かんだ言葉が並べられている。きっと写真の神様が降りてきて告げたのだろう。
 同タイトルで2冊の本がすでに出版されている。個人的には「この写真がすごい2」の方がすごかった。何がすごかったかは、手にとってみればわかるはずである。
  実をいうとこの本を読むまで氏を知らなかった。
 写真家なのか、評論家なのか、それとも高名なプロ写真家の故大竹省二氏の親族なのか、との認識程度。
 名を知ってからというものネットで検索をしてみた。ブログに辿りつく。
 多くの著書が出ていることも分かった。
 早速今回下記の本を読んでみた。
 はじめて多彩な能力を持つエッセイストであり小説家であることを知った。
   地元の写真家故大竹省二氏とは何ら関係はなかったのである。

Otake02

Otake01


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2016.05.31

吉川英治名作選「桧山兄弟」

  今年は吉川英治の著作にどっぷりとはまっている。
 元はといえば「親鸞」を読み始めて、鎌倉時代へと遡り、その歴史への好奇心は「新平家物語」にたどり着いたのである。
 さすがにこの物語は大作であったが、記憶に残る歴史の復習ともなり、読後は満足感で満ちていた。
 次に「私本太平記」を手にし第1巻を読み終えたところで自分の分身が「お疲れ様の声」を聞いてしまった。これも巻数を見て長編であることに一服感が出てきてしまったからだった。
 だからといって作家吉川英治の著作から遠ざかりはしなかった。
 そして手にしたのは「檜山兄弟」である。
 内容を知らぬまま読み進むうち、明治維新を目指し歴史の歯車となる主人公の活躍に一喜一憂、まさに痛快時代劇である。物語の中に様々な作者の仕掛けがあり、頁を繰る指に力が入ってしまう。
 幕末維新の実在人物、すなわち高杉晋作や大久保、西郷たちが数多く登場する。だが中心軸は主人公檜山兄弟である。同時に忘れてはいけないのは、イギリス公使パークスを国際勤王派として、フランス公使ロッシュを国際佐幕派として登場させている。これによって当時の国際情勢を視野に入れたグローバルな視点が幕末維新小説として画期的な試みを成している。
 ほかには兄弟が危機一髪のところで海賊船が突然現れ彼らを救う場面は圧巻であった。
  硬い歴史小説を読む合間には少しばかり軽い?この物語は一読に値する。しかも読後の清涼感は梅雨時には最適な一冊でもある。
 映画にでもなったらどんなにか見せ場が多いことか、楽しい娯楽時代物になることだろう。Hiyama_2


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2015.04.24

他者であること

最近、歴史小説家の宮城谷昌光氏にハマっている。氏の歴史小説のうち自分の地域に関する作品を読み始めて以来、氏の名がつくものを乱読している。
先日、図書館で著書を探していたところ、エッセイの棚に彼の名を見つけた。
書名は「他者が他者であること」とあり、哲学的なタイトルだと少しばかり難しいかなと躊躇した。
それでもせっかくだから彼の作品の注釈にでもなっているのだろうから目を通しておこうとページを繰った。歴史小説家でありながら歴史小説は嫌いだったことや、著書の裏話など、どれも興味深い内容だった。
読み進むうちページ半ばまできたら、自らの趣味の話になった。かつて作家になる前は知る人ぞ知るアマチュヤカメラマンで日本カメラの月例応募の常連だった経歴を持っている。
 「カメラ」の章が70ページにも及ぶ。金賞を取るほどの腕前で、その努力の軌跡が語られている。
なかでも月例始末記は興味をそそる。月例作品作りにあの手この手を駆使しセロテープを使用することを思いつく。結果は見事落選。次なるはステンレスを使う。だがこれも見事に挫折。これをきっかけに月例から離れたという。フォトコンテストに挑戦する人にはぜひ愛読を進めたい一冊である。
   巻末に初出一覧があった。そこには日本カメラ1992年1月号から12月号と記されていた。Tasya

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2010.10.28

作家加藤廣を読む!勝者に悲哀、敗者に美学

もし、新聞の文化欄(2010.10.16付け中日新聞)で加藤廣氏の名を見つけなかったら、この本にはたどり着かなかっただろう。
「信長の棺」書名からして読書欲を満たしてくれそうな感じはしないが、デビューしたのが75歳でそれからの5年間で本能寺三部作を刊行したというからすごい。
記事をここまで読んで「一丁読んでみるか」という気を起こさせてくれた。
当書は信長の遺骨のありかを探していく面白い展開でミステリーだ。
読者をどんどん小説の中へ引き込んでいく。Katouhirosi
もちろんその過程では標題のとおり人間のドラマを描いている。
文庫本2冊であったが、あっという間に2冊完結は読み終えてしまった。
筆者の肩書き、社会人経歴も興味がある。
いずれにしてもちょっと嵌ってしまったかなという感じだ。
次は「秀吉の枷」に手を付けようかと手ぐすねを引いている。

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2010.04.21

鉄舟という男

小説もテレビのドラマも幕末編は興味深い。
とりわけ、NHKの大河ドラマの「龍馬伝」は絶好調だと個人的には思っている。
時代背景といい、歴史上の登場人物といい、まさにドラマに引き込まれてしまう日曜日の放映時間帯だ。
そんな中にあって、ふと思うのだが主役と反するもう一方の側はみんな悪者なのか、愚かなのか。
善悪人がいるから筋書きが面白いのであって、この時代はいかがなものか。
とかく主人公に贔屓目になるのが物語の展開だが、歴史の一コマとなるともう一方の側の人物の動きも興味深く、知りたくなる。
山岡鉄舟という男は、もう一方の歴史の立役者であろう。Inochi
先日、静岡市で開かれた直木賞作家山本兼一氏の講演会で「鉄舟」に関する著作の中身に触れていた。
このとき鉄舟がなぜ静岡になじみがあるのかその理由をはじめて知った。
清水次郎長が一役買っていたのだ。
そればかりではない。
最後の将軍徳川慶喜の名代として西郷隆盛と江戸城の明け渡しの談判をしたというのである。
詳しくは著作を読んでいただくのが一番だが。
幕末の一方の側鉄舟の活躍を知ることも歴史を面白くするのではなかろうか思う。
今、彼の偉業と人物伝にぞっこん惚れこんでしまっている。Inochi2
山本兼一氏の小説「命もいらず、名もいらず」下巻「明治編」は一段と面白い。

※写真のサインは山本兼一氏のもの。なぜかどくろがかかれている。その理由がわかる方はコメント希望します。

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